今日は、3月3日、ひな祭り、この日が来ると思い出す。
新派の芝居「日本橋」です。
この芝居の中の名台詞
「春で、朧で、御縁日、同じさざえと蛤を放して、
巡査の手帳に名を並べ、女房と名告って、
一緒に参る西河岸の、お地蔵様が縁結び―」
あと小唄にも「日本橋」上下があります
小唄 日本橋・上
笛の音も 曇りがちなる 弥生空 暗き思いに 葛木が たちきる絆
川水へ 流す供養のひな祭り つながる縁の 西河岸も 春で朧で
ご縁日 お地蔵様のご利生が 利いてお神酒の 酔い心地 一石橋の
達引も 意地が命の 左褄
解釈と鑑賞
この新派小唄『日本橋』は、芝居の意匠考証をした伊東深水が、当時浪曲界の大御所であった 木村友衛から、姪の踊りの会のために作詞を頼まれたもので、『春で朧で御縁日』という喜多村緑郎の声色は当時の若い者は誰でも口ずさんでいたので、之をとり
あげて作詞したものである。
これを受けた春日とよの作曲は、『日本橋』上は『一石橋の場』で、~笛の音も曇り勝ちなる弥生空~は 淋しく出て清葉を唄い~暗き思いに~は、葛木を唄い、ここでガラリと調子を変えて明るい早間
となり~春で朧で御縁日~をカンでお孝のセリフを唄い、続いてへ意地が命の左棲~を聞かせて、日本橋芸者 の心意気を
はっきりと示し一幅の絵のような舞台を彷彿とさせる。
※ 「達引(たてひき)」とは互いの意気地を張り合うことである。
小唄 日本橋・下
淡雪の 消えて はかなき春の宵 あらぬ別れも 人の世の 宿命と知れど 口惜しく 思い乱れて狂う身も
形見の謎の人形を 抱いて寝る夜は明けやすく 泣けて涙の 花時雨 離れ離れのおしどりが 心の闇にふみ迷う
輪廻はつきぬ日本橋
【解説】伊藤深水作 春日とよ曲
小唄「淡雪の」は、お幸が心乱れて日本橋あたりを彷徨うところを唄ったもの
で「あらぬ別れ~心の闇に踏み迷う」までは晋三との思いもよらぬ別れに心が狂い、形見に残された雛人形を抱いて泣きながら夜となく昼となくもの狂うお
孝を唄い「輪廻はつきぬ日本橋」は日本橋をめぐって幾多の人が喜び悲しみを繰り返している人の世の輪廻の姿を唄ったものである。
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