小唄徒然草 別冊「秋の蛍」

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小唄振り 秋の七草
立方・朝丘雪路

唄・春日とよ栄芝
糸・春日とよ喜扇
替・春日豊芝洲(NHK邦楽花舞台より)

春日の師範の方へ、
この私の弾いている替手ですが
「春日派の替手は手数が多いので、
踊りのじゃまになるので
芝洲さん他の手を考えてよ」と
師匠から言われて私が作ったものですので
春日派の替手と違っていますのでご了承下さい。

小唄「秋の七草」の歌詞で、
秋の唄なのに「蛍」の歌詞があるのはなぜですか?

と問われましたので、
小唄徒然草 別冊として、その「蛍」の意味を解き明かします。

秋の七草 二上り・替手三下.(本調子)

秋の七草 虫の音に
鳴かぬ螢が 身を焦す
君を 松虫 鳴く音も細る
恋という字は大切な。

(陰暦初秋七月)

[解釈と鑑賞]
初秋、螢の命は夏で尽きて了うのが普通であるが、時には秋まで残っていて、稲田の露と見まごうことがある。
この『秋の螢」をとりあげて、夏の涼みに いとしいと思い初めた男性のことを思う 女心を唄った、江戸端唄である。
『秋の七草』は、萩の花、尾花、葛の花、撫子の花、女郎花、藤袴、朝顔の花の七種の花が、
古来から七草 として選ばれているが、朝顔の代りに桔梗を加えてもいる文献もある。

この小唄では、秋の七草と唄って秋になって、軒端に現れた虫の音が聞える頃になった、と軽く解すればよい。

「鳴かぬホタルが身を焦す」は、江戸時代には『残る蛍が身を焦す」と唄ったが、
「鳴かぬ蛍が身を焦す」の方が、ずっと余韻がある。「残る螢」とは、前にのべた『秋の螢』のことである。
軒端の秋草の中から聞えるのは、松虫の鳴き声であるが、その鳴く音は恋しい人の声に聞える、というのが『君を松虫、鳴く音も細る』である。
終りの『恋という字を大切に」は 本には、「大切ぢゃ、「大切な」、「大切さ」など種々書かれている。
初秋の夜、秋草に残っている螢の淡い光をみ、松虫のすだく音を耳にし乍ら、
恋心になやむ若い娘を唄っ た、しっとりとした江戸小唄で、江戸端唄から採ったものである。
待つ虫ー初秋の夜、雄がチンチロリソ、チンチロリンと、松風の音が、身にしみ渡るような澄んだ音でなくので。 延喜時代のの風流人が松虫と名づけたといわれる。

コオロギ科に属しているが、鳴声はコオロギはるかに美しい。
松虫はその名から、『人まつ虫』『誰をまつ虫」などと、『待つ」という言葉にかけて、よく詠ま れており、
能に『松虫」があり、狂言『月見座頭』には、『虫も多い虫に、此松虫に上越すものはござるまい」といって第一とし、鈴虫を『松虫に並ぶもの」としている。

 

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